エッセイ エッセイのバックナンバー

2001年に出版した「帰郷」という野寺の写真集があります。これは私の家族や、故郷である富山県・上市町を中心に近隣の町や人々を1996年から5年間をかけて撮影したものです。

それまで旦那は東京という大都会に近い浦安の田舎で生まれ育ったせいか、または時代のせいか、オシャレで都会的な場所やモノに憧れてNYやLAといった海外での撮影を中心にしていました。そのまったく日本の田舎の風景など興味がなかった旦那に異変が・・・。とあるきっかけでのめり込んでしまったのです。私の故郷に昔の浦安の原風景を見出したようなのです。

40年前までの浦安は漁村で、地下鉄東西線や大規模な海の埋め立て工事が始まるまでは交通の便は悪く、東京まで行くにはバスしかなくて、それも錦糸町行き。よって子供の頃は東京の中心は錦糸町だと思っていたそうです。今の浦安市は4分の3が埋め立て地です。その埋め立てをするために漁師は漁業権を放棄させられました。当時、漁業権の放棄と引き換えに多額の金銭をもらい身を持ち崩した人も少なくなかったとか。そんな場所で幼少期を過ごしたせいか、私の故郷に何か郷愁に似た心象風景がダブって見えてきたのではないでしょうか。

この作品は1999年に銀座ニコンサロンで写真展、NHK富山の情報番組に出演、2001年に写真集の出版、2011年に家庭画報誌に巻頭掲載、台湾の写真雑誌SNAPPPに特集とたびたび地味に注目されていました。特に台湾の編集者達はこの作品にかなり関心を示していたのが印象的でした。日本人と共通するメンタリティを持っているのかもしれませんね。

しかし残念ながら長い間この作品集が私の地元で話題に上ることはありませんでした。撮った本人も忘れてた?!ということはありませんが(笑)

ところがこの春に町役場の人から連絡がありました。その人は以前から「あの海の日」のファンで野寺の写真をよくご存知でした。その人がUターン就職で町役場にお勤めされたことがきかっけで「帰郷」と出会ったそうです。(出会った経緯は長いので書きませんが)何事もタイミングというものがあるようです。そしてあれよあれよという間にこの11月から12月にかけて地元の美術館での写真展が決まり、今はそれに向けていろいろ準備を進めています。難しい問題もあると思いますがぜひ成功させたいと思っています。地域興しという面もあり、町の人達と一緒にできるイベントを企画したり、参加してもらったりしたいと思います。そういうことで貢献ができたらいいなぁと今からワクワクしています。

詳細は決まり次第ご案内いたしますので少々お待ち下さい。

写真家 野寺治孝
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