エッセイ エッセイのバックナンバー

松任谷由実さんが紫綬褒章を受けられたというニュースを聞いて改めて日本を代表する国民的歌手だと思いました。音楽の才能もさることながら、精神力、体力は超人的でそれにもまして人間力が素晴らしい器の大きな女性だなぁ、とつくづく感じ入っております。私はたかだか数回しかご本人にお会いしたことはありませんがとても気さくな方でした。

また彼女の事務所のスタッフさん達の熱意が半端じゃないんです。1日24時間、1年365日、全て彼女のために働いている感じがしました。旦那様の松任谷さん(通称MMさん)はプロデューサーとして時には過酷なリクエストを由実さんに出しますが、そのことでスタッフ全員が一丸となって由実さんをサポートするのです。たぶん可哀想、支えてあげなくてはという気持ちにさせるのではないでしょうか。そういう意味ではMMさんは憎まれ役を買ってでているのかもしれませんね(ご本人が意図しているかどうかはわかりませんが)。うちの旦那が由実さんの事務所にお祝いメールを出したらスタッフの方からご丁寧な返信が返ってきました。きっとたくさんのお祝辞が届いていたことでしょうね。

話は変わりますが、写真はアートの世界では歴史が浅いせいかあまり権威というお墨付きがもらえません。あるとすれば木村伊兵衛賞とか土門拳賞とか。二科展などには一応写真の部門はあるらしいのですが二科展自体が・・・(ご想像にお任せします)昔から旦那は写真家協会に所属したり、賞取りレースに参加したりすることに興味がありません。その昔、電通のギャラリーで写真展をやらせてもらったとき、写真関係の部署のお偉いさんが見に来てくれて写真をすごく褒めてくれました。ただ向こうも商売、クライアントを説得するには○×賞を取ったとかのお墨付きが必要と言われました。要するに写真家を上手くブランディングすればお金儲けができるわけですね。

そんなわけでお金儲けが得意でない旦那ですが、家族としては生活ができないと困りますので何とか働いてもらっています。しかし得意でないわりにはそこが商売人の息子、小商いが好きみたいです。写真家、カメラマン受難の時代に彼なりに頑張っているので私としては褒めてあげたいです。

幸い好きなことが仕事になっているので本人は幸せですね。一番好きなことは写真を撮ること、それを写真集にすることと写真展をすること。そしていつまでも写欲(写真を撮りたいという気持ち)を持ち続けたいと言っています。

話はまた戻り、由実さんとハワイへロケに行ったときのこと。朝早く旦那がカメラを持ってビーチを散歩していたら、由実さんに「野寺さん何してるの?」と声をかけられたそうです。「旅に出るといつもこうやって朝から写真を撮ってるんですよ」と答えると「本物ねぇ」とひと言おっしゃったそうです。そのひと言が旦那にとって一生の宝ではないでしょうか。

余談ですが、家族でコンサートのあとに楽屋へ挨拶に行った際、お土産に浦安では100年の歴史がある老舗の煎餅屋のお煎餅を差し入れしましした。当時小学生だった息子に手渡すように言うと、「100年前のおせんべいです」と言ってしまいました。さすがに由実さんも笑ってらっしゃいました。

写真家 野寺治孝
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