エッセイ エッセイのバックナンバー

 先日、朝刊を読んでいた旦那がエコ記事の中に、ハンガーに掛かったアロハシャツの写真を見つけ、「俺の写真だ!」と言ったのです。それは昔、ハワイのホテルの窓辺で撮ったものでした。涼しげな感じが記事の内容(今年のクールビズについて)とマッチしていました。

 旦那の夏服の定番はアロハシャツです。今年もその季節がやってきましたね。旦那曰く、アロハシャツ(略してアロハ)は湿気の多い日本の夏にはもってこいの服だそうです。今年は節電の影響で超クールビズスタイルだそうですが、お役所もアロハを着て少しは頭を柔らかくしてほしいものです。

 そんな旦那のアロハのコレクションは70枚以上あります。ハワイへ行くたびに買ってきたものが貯まったと言う感じですね。でもヴィンテージとかアンティークなものには興味がなく、あくまでも実用、普段着です。シルクでも高くても70~80ドルくらいでしょうか。最近は沖縄出張のたびに、那覇にある「マンゴハウス」というお店のものを買ってきます。選ぶ基準としては、色と柄、ボタンが貝かココナッツか、同じ柄で色違いのものもよく買います。そして好きな柄はパイナップル、バンブー、花などです。そのコレクションの中で唯一値段が高いのは、キモノの生地で特注で縫ってもらったものです。取材に行った先の作家さんが作っていたものにひと目惚れして、その場で生地と何十種類もの中からボタンから選んで作ってもらいました。パーティー用の一張羅です。

 最近は息子も影響を受けて、綿やシルクなどのアロハを着て通学していますよ。そういえば私が初めて旦那に会ったときも派手なアロハを着て真っ黒な顔をしていました。うーん、とても日本人には見えなかった・・・謎の東洋人という雰囲気でした。

 アロハシャツといえば以前こんな出来事がありました。日本K倶楽部というところの撮影に行ったときのこと。そこは大正時代の歴史的建造物で、財界人の社公場で一流企業の役員以上か政治家のような人しか会員になれないそうです。当然、撮影許可をもらいクライアントの担当の方とK倶楽部の総務部長さんが一緒についていました。ほんの数分、その二人と離れて旦那と私は上の階へ上がって行き、階段の踊り場のステンドグラスを撮影していました。すぐ上のフロアでなにやら会合があるらしくスーツ姿の男性達がちらちら見えました。するといきなり「君たち、許可をもらっているのかね。そんな格好でうろうろされては困る!」と大きな声で叱咤されました。振り返ると、年配のいかにも支配人という感じの慇懃無礼な物言いのオヤジ(失礼)が顔に青筋をたてて立っていました。一瞬、ムッときましたが、ちょうど撮影も終わったので、「すみませ~ん。終わりました」と言ってさっさとその場を立ち去りました。そのおじさん、よほどアロハシャツが気に入らなかったみたいです。旦那的には遠慮して白地に白いプリント柄の一番地味なアロハを着ていったつもりだったようでしたが。

 しかし、残念なことに、日本を代表する会社のお偉いさんが乗る運転手付きの黒塗りの車が、その倶楽部の前の道路にずらっと並び、クーラーをかけてご主人を待っているっていうのはどういうものでしょうか。やれやれ、普通の人々のほうがよほどエコのことを考えてると思いませんか?

写真家 野寺治孝
All images copyright © Harutaka Nodera. All Rights Reserved.