エッセイ エッセイのバックナンバー

 私たち夫婦は二人で一つの脳みそです。旦那は右脳、私は左脳(創造力がないという意味で)という具合に。旦那はカイロプラクティックの先生に「右脳しか働いてないですね」とよく言われます。「一度、自分の頭の中でも見ておくか」と言い、昨年頭のMRIを撮りました。するとびっくり左側がガランドウでした。(笑)

 冗談はさておき、旦那は右脳派のヒラメキ人間。よく寝起きや朝の散歩で何かがひらめくと言います。それが彼の中ではイメージ化されているのですが、凡人の私には理解不能です。それとよく男女のこともわかるらしく、「あの二人は怪しい」みたいなことを言い、それがよく当たるんです。動物的勘?かな。そうそう旦那が朝、公園で体操をしていたら見知らぬおじさんに「お宅、体硬いねぇ」と言われ一瞬ムッときたけど「体は硬いけど頭は柔らかいですよ」と切り替えしたらしいです。(うーん、笑点みたい。座布団1枚!)

 アーティストはやはり右脳派が多いようですね。料理研究家の塩山奈央さんも完璧そちら派。どこへ旅してもおいしいものを食べると、その土地の食材を使って料理をしたくなるそうです。右脳派はそんなときにひらめくのでしょう。その打算のなさ、心の底から湧き上がってくる創作意欲、本物です。だから彼女の料理は天才的においしいし、彼女とのお仕事は本当に楽しいんです。おいしいご飯付きですから。

 またあるとき旦那が一人でボストンから日本へ帰る飛行機の中で日本人の物理学者の先生と一緒になったそうです。このフライト便、実はトラブルだらけで結局翌日にシカゴから帰ってくることに。おかげでエコノミーがビジネスクラスになったので本人は喜んでいましたが。まぁそれはいいとして、その先生と話をしていたら意外なことがわかったそうです。物理学で一番大事なことはヒラメキなのだそうです。物理というと極左脳派というイメージを持っていましたがヒラメキが一番重要。あとはそれを数式にしたり、具体化するということらしいです。頭脳明晰な人というのは右脳と左脳をバランスよく使える人のことなのでしょうか。

 最近わかったことがあります。なんと旦那は読字障害だったのです。子供の頃はかなりそれで苦しんでいたそうです。とにかく漢字が苦手。小さな子供が書く鑑文字を中学生になっても書いていたそうです。今でこそレインマンのような人が認知されてますが昔はそんな病気があることなんて皆無。(ちなみにトム・クルーズもこの障害で台本が読めないと聞いたことがあります)できないことは努力不足、能力不足と評価され、よく先生に居残りをさせられ、間違えた漢字を100回書かされたそうです。それが今だにトラウマみたいです。幸い旦那の場合はそれほど重度ではなかったようですが。

 ところが人間の脳というのは上手くできていて、そういう人は空間認識が発達しているそうです。これは写真家にとってはかなり有利なことで、旦那曰く、「漢字が書けても商売にならん!」と豪語しています。

 しかし最近は皮肉なことに文章を書くことも多くなってきました。そこで私の出番。文章を組みなおしたり字を直したりリライトをします。小学校の頃は漢字テスト得意でした。それが今になってやっと役に立っています。人生何でもムダなことはないですね。しかし何といってもすごいのはこの野寺を生んだ母でしょうか。彼女が一番クリエイティブな人間のような気がします。そんな母のおもしろい話はまたの機会に。

 

写真家 野寺治孝
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