エッセイ エッセイのバックナンバー

 今年は旦那にとってはまさに山あり谷あり、さらに穴ありという激動の1年でした。

 まずは山、これは今年の前半に2冊の写真集「旅写」「すべての空の下で」が出版できたこと、その写真展を開催できたこと、長年の夢であったキューバへ取材旅行に行けたことです。あの頃は順風満帆で意気揚々だったなぁ・・・

 谷のほうは「BAN」(警察関係者が購読される雑誌)に長年「今月の風景」というタイトルで写真を掲載をしていただいていたのですが12月号で最終回となりました。寂しい限りですが今までお世話になった編集部のSさんには感謝の念でいっぱいです。ありがとうございました。

 さてさて、問題は穴のほう。長年抱いていた不安材料がここにきてついに爆発したという感じでしたねぇ。これまで(優秀なスタッフさん達に支えられながら)用心深く歩いてきたつもりでしたが突然穴ボコに足を取られそのままズルズル穴に引きずりこまれたという気分。某社の社長のパワハラが社内だけでは済まず私を含めた社外にまで波及してきたのです。その会社に関わった多くの死屍累々を見てきました。旦那曰く「今のままでは写真家としてもう一歩先のものを撮る意欲が湧かない。お金よりも大切なものってあるんじゃないかなぁ」そしてついにその仕事を辞める苦渋の決断をしたわけです。現在は心理的ダメージは回復しつつありますが。経済的ダメージのほうは・・・。

 人間長く生きていればこんな状況はたびたびあります。その昔、バブルがはじけた頃もそんな感じでした。作家を目指すか商業写真を撮るかで悩みましたねぇ。その頃『TOKYO BAY』を撮り始めていて地平線の位置が決まらないと苦しんでいましたし。折りしもそんな時アメリカのケープコッドへ取材旅行に出かけました。そこで幸運にも尊敬するジョエル・メイロウィッツ氏に出会ったのです。持っていたBAYの写真を氏に見てもらいました。見た瞬間「美しい!」とお言葉をいただき、いくつかアドバイスももらいました。旦那の頭の中で何かが閃いたのか、日本に戻ってから再び『TOKYO BAY』を撮り始めたら不思議とかつての迷いは消え、地平線の位置がぴたりと決まったといいました。何かがふっきれたのでしょうか。それ機に彼は作家になると腹をくくったのです。友人のY子さん曰く、「大きく跳躍するには低く低くかがまないとだめ」と。たぶん今がじっと低くかがんでいる時なのかもしれません。

 来年早々、電子出版で写真集を出します。幸いコンテンツ(写真)は山ほどあるのでいろんな切り口でお見せできるかと思います。ピンチをチャンスに変える男なんですね(転んでもただじゃあ起きないしぶとい男!ともいう)気分的には今年中には穴からはい出て、その穴を埋めてしまいたいです。そして来年はウサギのようにピョーンと大きな跳躍ができればいいなぁと楽観的に考えています。それでは皆様、来年も引き続きよろしくお願いいたします。良いお年を。

※電子版写真集「海と私と日曜日」は海の写真詩集です。今回は詩も旦那が書きました。この人がこんな詩を・・・と一読の価値ありかも。うふふ。詳細は決まり次第HPに告知しますのでお楽しみに!

写真家 野寺治孝
All images copyright © Harutaka Nodera. All Rights Reserved.