エッセイ エッセイのバックナンバー

 数年前、大物ロックギタリストをインタビューするから撮影をしてもらえないかという依頼がきました。その大物とは泣く子も黙るレッド・ツェッペリンの伝説のギタリスト、ジミー・ペイジ氏。往年のギター小僧やロックファンならエキサイトものでしょう。うちの旦那もそのうちの一人。「一緒に行くか?」と聞かれて私もアシスタントでついて行くことに。しかし私も旦那も芸能界には疎くて、まして外タレとなるとさっぱり。どんな段取りでやるのか当日取材先のホテルへ行くまでまるで検討がつきませんでした。

 依頼主からの注意事項は、ペイジ氏のマネージャーのおばさんがすごく恐い人で余計なことは一切聞いてはならない、言ってはならない、そしてインタビュー時間は1社につき10分とのことでした。少し不安な気分ながらも気持ちはワクワク興奮気味に出かけて行きました。(ちゃっかりサインをもらおうとセカンドアルバムも持参)

 新宿の有名ホテルのスィートを2部屋用意してテレビ用とラジオ用のインタビュールームにしていました。ペイジ氏は朝から1日中その2つの部屋を行ったり来たりしていたそうです。ホテルのロビーではその関係者らしき人たちがウロウロしていて、レコード会社の人達も順番待ちしていました。そんな私達の脇をクリス・Pさんがインタビューを終えて通りすぎていきました。どこから見ても彼とひと目でわかるほど目立っていました。

 とにかく厳しいマネージャーなので余計な人(私のような人ですが)は部屋に入れないかもと言われてました。ヒヤヒヤしながらも同じエレベータに乗っていたレコード会社の人たちに紛れてちゃっかり入ってしまいましたが。

 部屋の中ではラジオ番組のパーソナリティーの女性やスタッフが準備中でした。そこへ007に出てくるM(ジュディ・デンチ)を少し若くしたような銀髪ベリーショートの年配の女性とペイジ氏が登場。彼はロックスターというより白髪で、品の良い英国紳士という感じでした。離れたテーブル席でスタンバイしていた私達に突然、ハーイと気軽に声を掛けてくれる気遣いのある素敵なおじさまという雰囲気でした。そしてそんな彼のそばには腕組みをした仁王立ちのマネージャー。肝心の写真といえばほとんど記念撮影的にしか撮れませんでしたが。依頼主が氏にアルバムにサインをとお願いしたら、氏はマネージャーに「してもいい?」的なことを聞いていました。いちいち許可がいるらしい。(ちょっと情けない)彼女は厳しい視線で「サインは1枚だけよ」と釘をさしていました。私がツェッペリンのLPを持って躊躇していると、旦那が「一人1枚だから」と言っていきなり私の背中をドンと押しました。そして書かれたサインは『NODRA』でした。これは世界に1枚しかない家宝(?)でしょうね。ラッキー。

追記
またまた誰かがペイジ氏に「沢尻エリカを知ってますか」みたいなことを質問したら、通訳嬢が「別に」事件の話をしていました。ちょうどエリカ様がロンドンでツェッペリン再結成コンサートを見た後だったので。

写真家 野寺治孝
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