エッセイ エッセイのバックナンバー

H(野寺治孝) J(純子)

:昨年はいろいろあったね。自分のなかでは人生最大のピンチだったよ。まず、仕事の面でひどい目に遭った。信用していた人に裏切られたね。そのときは憤慨したけど冷静に考えてみたらいい意味で縁が切れて良かったと思う。あのまま付き合っていたらもっと大変なめに遇ったと思うよ。
また別件なんだけど、ある仕事をしようとしたら知り合いから横やりを入れられました。私は反論したかったんですがこのようなチャチャの付いた仕事はしない主義なのでこちらから断りました。なんだか新年早々嫌な話題から入ってごめんなさい。

:確かに辛いことが重なった年だったわねぇ、、、公私ともども。あなたの体調もいまいちだったこともあって。
:ストレスだね。今は回復したから言えるけど半年以上やる気が起こらず、体重も10キロ近く落ちたんだ。病院に行ったけどどこも悪くなく、言ってみれば男の更年期だったみたい。秋頃から回復して体重も元に戻りました。(笑)逆に太りすぎないようにお互い気をつけようね。
:そうよ。私の体重に近づいてもらっちゃ私が困る!!

:でも人生ってうまくできてるんだよ。自分の調子が戻ったら大きな仕事が舞い込んできた。一つはもう撮影が終わって春のリリースを待つばかりなんだけど、まだ発表ができません。もう少し待って下さいね。もったいつけてすみません。でもその仕事はとても楽しくて久々に燃えました。自分の夢の一つが叶いました。写真家の仕事の楽しいところは夢を実現して残せるってところだよね。本当にそれはうれしいよ。
:そうそう、自分の作品が残るって素晴らしいことだよね。ユーミンのCDジャケット撮影に関われたことはすごいことで日本の音楽史にも残ると思うの。あのユーミンのだよ。
:だよねぇ(笑)冷静に考えてみればユーミンのジャケットになるって自分で言っちゃうけどすごいよね。あと今年は小学校の教科書にも載るしね。劣等生の私としては考えられないよ。小学生の頃教科書にいたずら書きしていつも先生に怒られていたよ。そんな私の写真が教科書に載るんだよ。皮肉だよね。
:先生もびっくりだよね。人生ってわからない。思いもよらないことがときどき起こるんだから。良い子の皆さん旦那の写真にいたずら書きはしないでね(笑)

:もう一つはある自治体が来年写真集を出すんだけど、その写真家に私が数十名の候補の中から選ばれて今年1年かけていろいろな場所を撮影することになったんだ。長丁場だけどこれもとても楽しんでできる撮影だね。すでにもうロケハン撮影をしています。
:あの体調が悪くて気力がないときにそんな仕事が来てもできなかったと思うの。いつも明るいあなたがあんなに風になるなんて結婚生活の中で初めてだったので途方に暮れたこともあったけどいろいろな人達が助けてくれて今はすっかり元に戻ったので一安心。やっぱり心身健康なことが一番だと思うの。それがあればあとは何とかなるんじゃないかな。
:そうだね。本当にいろいろな方に助けてもらった。苦しいときに親切にしてくれた人は忘れないよ。本当に有難かった。でもね、私は小さい人間でひどい目に遭わせた人を許すほど心が大きくないんだ。ときどきそんな自分が小さいし、情けなく思うし、忘れたいとも思うんだけれど思い出すと今でもムカつくんだ。これは本音です。
:あらら、トラウマになってしまったのね。でも大丈夫いつかは克服できるよ。いい写真を撮れば。そのためにアートセラピーにも通って内なる可能性を引き出す修行?をしてるんでしょ。セラピストのK先生とは昔からのお付き合いであなたのことを良く知ってるからいい方向に導いてもらえるんじゃないかしら。私はそう願って勧めたんだけど。

:最近思うのは、よく本なんかで「明けない夜はない、夜明けが一番寒い、止まない雨はない、どんな偉人にも失意のどん底があった」とかそんな言葉があるよね。これは経験上本当にそうだと思うんだ。調子が最悪のときにこんな言葉を聞くと「そんなのあるわけないじゃん。まして私なんか弱い人間だしそう思えるのは一部の強い人だけさ」って思ってたんだ。でもね本当に人生っていうのはいいこともあれば悪いこともあるんだよ。潮のように満ち引きがあったり光が強ければ影も強いんだ。だから調子が悪いときにはじっと嵐が立ち去るのを待っていればいいんだ。逆に調子のいいときは少し謙虚になり足るを知ればいいんだよ。
:悟ったのね。まあそういう年頃なのかもしれない。頭は若いつもりでも体がもうついて行けてないって感じ。自覚しなさいってことでしょう。
:頭も薄くて若くはないよ。体も硬いしね。まあいろいろあったけど昨年の暮れに逆転ホームランを打てたから良かったんじゃないかな。本当に人生はいろいろあるよ。これを教訓にしたいね。嫌なこともされたけどその何倍もいいことしていただけた。本当に感謝です。ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。先の仕事の件は時期が来ましたら発表しますのでもうしばらくお待ち下さい。

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写真家 野寺治孝
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