エッセイ エッセイのバックナンバー

そもそも私はなぜ、写真家になったのだろう?幼少のころなりたかったものは漫画家、医師、プロ野球選手、ミュージシャン、映画監督でした。写真は高校生のころに趣味で始めました。写真学校に入ったことも誰かの弟子入りもしたことはありません。独学です。昨年亡くなった山本先輩との出会いが大きかったですね。彼は浦安で写真屋さんを営む傍ら「集団剣」と言うクラブを作り会長をしていました。いろいろと教わりました。テクよりは人と成りのほうが多かったですね。写真をやってくほど難しくて途中で挫折しそうになりましたが、あるとき「自分の好きな世界だけを思い切り撮ってみよう」と思いアメリカに行きました。この写真を山本さんは「青いねー。そして若いねー。」って褒めてくれました。もしこのとき彼に「こんなの写真じゃない!」って言われていたら今日の私はいないでしょうね。

仕事もいろいろやりました。デザイナー、運送業、家業の牛乳屋さんなど。しかし何か燃えてくるって言うか、バーンって来る充実感がなかったのです。それと反比例して写真を撮っているときだけは自分の世界を表現出来る充実感に浸れました。他のことは遊びにせよ仕事にせよ、まして恋愛などどれもうまくいかず悶々としていた中、写真だけは唯一リアルっていうか、生きてるっていうか、燃えてる感じがしました。

前にも書きましたが義父とはいろいろあってプロになってしまう訳ですが、お金のことはあまり考えませんでしたね。夢はただただ「自分を表現できる写真が撮りたい」これのみでした。どこへ行くにもカメラを持って出ました。この夢には少しづつ近づいていますが、ただゴールが解らない。正確には「近づいたと思ったら遠ざかる」ですかね。

具体的な夢は二つあります。ひとつは写真集を出版したいです。実はもう20冊以上も出させていただいてるんですが「出したい!本作りは楽しい!」印刷工場のインクの匂いが好きなんですね。ただ私の本は売れないんです。よくこんな売れない作家が20冊も出せましたね。出版社のみなさまありがとうございます。いやごめんなさい。

二つ目の夢は写真ギャラリーを持つことです。日本の個人ギャラリーは変な権威があるんです。要するにそこのオーナーさんがすべてなんです。ワンマンなんです。あとメーカーギャラリーは規制が面倒です。私の目指したいのは敷居は低くいけれど質が高いギャラリーです。誰でも気楽に入れて話しが出来る。本や写真が買える。そしておいしいコーヒーが飲める居心地のいいカフェは必須です。レストランがほしいくらいです。食とアートは同じ土壌です。私自身の写真展で一番気になることはオープニング・パーティーの料理です。(笑)写真文化の底辺を広めたいですね。小さくてもその発信源の場所になれればいいです。

劣等生で何の取りえもない私がここまでやってこれたのは応援してくださる皆さまの御かげです。そして人生を楽しく変えてくれた写真には本当に感謝します。写真家になったのはやはり写真が好きってことでした。ベタな結論でした。(笑)

写真家 野寺治孝
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