エッセイ エッセイのバックナンバー

 先日心の専門家、鈴木惣士郎さんとお会いしました。(詳しいプロフィールはwww.soshiro.com)飯田橋の川面にあるカナル・カフェで4時間も話をしてしまいました。「なぜ、いいものが売れなくて、くだらないものが売れるのか」など話は尽きませんでした。

 その中で音楽の話になり、小田和正氏の話題で盛り上がってしまいました。実は私は彼の音楽が苦手なのです。(小田ファンの皆様ごめんなさい)理由はいい歳をして甘い声で女性を口説くような詩の内容と君が、君が・・・というところが生理的にダメなのです。というわけで小田氏を否定してしまいました。惣士郎さんはしばらく私の話を聞いていましたが、突然、ニヤっとし「野寺さんは実はとても小田さんがお好きじゃないんですか?」「えええええええ??????!!!!!」何と言っていいのか言葉もないほどウロたえてしまいました。当然ながらCDは1枚も持っていません。高校生のときに買ったシングル・レコードが1枚あるだけです。惣士郎さんは「大嫌いということですよね。でも無関心ではないということですよね」私は「それはそうだけれど、でも絶対に好きということは有り得ません。惣士郎さんの言っていることを受け入れることはできません」そんなやりとりが続きました。

 惣士郎さん曰く、「野寺さんの写真は圧倒的に女性ファンが多いのですよね」と。そう言われてみれば、仕事の依頼はほとんど女性的テイストのものを多く求められます。男性的テイストの依頼は皆無です。写真集に関しても売れているものは全て女性的なものばかりです。音楽に例えれば、私の好きなジャズやブルースよりも都会的で女性的でオシャレな、まさしく小田氏風の音楽なのです。ですから私の写真が苦手な人はほとんどが写真マニアの年配の男子です。「50過ぎのむさくるしいオヤジの女性受けする軟弱な写真」と思い嫌うのだと思います。

 考えてみれば子供の頃、故郷の浦安が大嫌いでした。田舎で汚くて、4畳半にぬか味噌の匂いが漂い、嫌で嫌で仕方がありませんでした。憧れはテレビの中の都会の生活です。将来大人になったら都会のスレンダーな髪の長い女性と南青山辺りに住んで、クロワッサンとカフェオレを朝食に、音楽はJBLのスピーカーからボサノバを流すんだと、そんな生活を夢見ていました。(大笑いですね)叶ったものはJBLのスピーカーだけです。クロワッサンは油っぽくて苦手です。今は自分の中に小田氏のような女性的感覚があったのをはっきりと自覚することができました。彼の私生活は案外男っぽい人なのかもしれませんね。

 

 お詫びです。小田和正ファンの皆様、今回は本当にごめんなさい。最初イニシャルか何かでぼかそうかと思いましたが、それでは意図が伝わりにくかったので実名で書いてしまいました。ただ、私の言いたかったことは彼の批判ではなく、自分の中にそういう感覚があったということを自覚できたことです。この歳になると短所は長所に、弱点は武器になることも経験として知っているので小田氏には感謝しています。今夜は唯一持っているレコード、オフコース時代の「愛と止めないで」を憧れのJBLで聴きたいと思います。

写真家 野寺治孝
All images copyright © Harutaka Nodera. All Rights Reserved.