エッセイ エッセイのバックナンバー

 ジェフ・ベックというギタリストを知っていますか?若い方はご存知ないかもしれませんが60年代から活躍しているイギリス人アーティストです。エリック・クラプトンの後釜としてヤードバーズというバンドに入りました。ベックのあとにはジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)が入った伝説のロックバンドです。その後、ロッド・スチュワートとバンドを組んだりしていくつかのバンドを経て、70年代後半からはソロとして活動しています。

 なぜ今、ジェフ・ベックなのかと言うと、2年前クラプトン主催のクロスロード・ギターフェスティバルのDVDを見ました。この中で彼は「ビッグ・ブロック」という曲を演奏していたのですが、これが凄い!テクニックがすごく、そして演奏が熱いのです。スリリングでまさにロックしていました。昨年('09年)来日したのでライブにも行きました。1回目は東京フォーラムでのソロライブ、2回目は埼玉アリーナでのクラプトンとの共演でした。どっちも良かった!なにが凄いかというと、若い頃よりも進化しているのです。ギターが歌っているのです。普通テクニシャンはその技巧だけが目立ち私はあまり好きになれないのですが、ベックに関してはそのテクが鼻につかいないのです。適材適所にそのテクが散りばめられ的を射ているのです。こんなギタリストは他にはいません。誰かが言っていました。「ギタリストを二つに分けると、ジェフ・ベックと彼以外だ」と。今、世界最高のギタリストは彼だと思います。そんな最高のライブを見てしまったので今年('10年)の4月のライブは少し不安でした。ところが演奏が進むにつれ、そんなことはすぐに吹き飛んでしまいました。昨年のライブから1年しか経っていないのにさらに進化しているのです。ギターに歌心があるのです。彼のギターはブルース、ジャズ、カントリー、ロック、さらにバラードさえ完璧に歌うことができるのです。彼は確か70歳に近いと思いますがどこまで進化し続けるのでしょう。枯れたという言葉は彼の辞書にはありません。
 

BECK,BOGERT&APPICE LIVE ’73年
大阪でのライブ。トリオによる演奏だが迫力満点。トリオバンドとしてはクリームと双璧。スタジオ盤もあるがこのライブ盤がお薦めだ。「ジェフズ・ブギ」ではカントリータッチのギターが聴ける。「レディー」のドラムもかっこいい。
 

BLOW BY BLOW ’75年
当時、フュージョンもクロスオーバーという言葉もまだなかった。これがそのジャンルの先駆けかどうかはわからないが、ベックのスタジオ盤ではこれが最高だと思う。「哀しみの恋人達」では泣きのギターが聴ける。ビートルズのカバー「シーズ・ア・ウーマン」ではレゲエのリズムを取り入れている。「スキャッター・ブレイン」はめちゃテクニックが凄く、超早弾きだ。
 

WIRED ’76年
前作の続編的な意味合いのアルバム。いい出来だがキーボードが前面に出すぎている。1曲目の「レッド・ブーツ」がずば抜けて出来がいい。この1曲のためにこのCDを買ってもいいくらいだ。ドラムのイントロが強烈でギターの入り方がスリリングだ。リズムが変則的でよくこんな曲が演奏できるものだ。
地味だが「カム・ダンシング」がファンキーで好きだ。
 

LIVE AT RONNIE SCOTT'S ’08年
最新のライブアルバム。全曲いい。映像が見たい人はDVDもお薦め。ジェフの指先が良く見える。DVDにはジョス・ストーンやクラプトンとの共演も入っている。ドラムにベイニー・カリウタ、ベースにタル・ウィケンフェルド(若干22歳の可愛い女の子)の二人がめちゃ上手い。「レッド・ブーツ」や「哀しみの恋人達」のライブバージョンも入っている。
 

EMOTION & COMMOTION ’10年
ジャケットは最悪だが演奏は最高。全編ほぼオーケストラとの共演だ。「コーパス・クリスティー・キャロル」「オーバー・ザ・レインボー」そして「誰も寝てはならぬ」など歌心溢れるギターが聴ける。日本盤CDにはボーナストラック「クライ・ミー・ア・リバー」が入っているのでこちらがお薦めだ。
 

 というわけで今回は孤高のギタリスト、ジェフ・ベックについて書いてみました。もしどれか1枚聴いてみたいという方は「LIVE AT RONNIE SCOTT'S ’08年」がいいのではないでしょうか。ちなみに私の息子(中3)も彼の大ファンです。

 エピソードをひとつ。日本人ギタリストのチャーさんがベック邸でセッションをし、ベックが遠慮してベースを弾いたのですが、ベースになってなくてギターのように弾いていたそうです。しかも、メチャウマで。チャーさんが「飛行機の時間なので帰る」と言うとすねて、ギターを一人で弾きまくっていたそうです。奥さんが玄関先で「いつもああなんです。こどもみたいですみません」と誤っていたそうです。なんだかわかるような気がします。可愛い人ですね。(笑)

写真家 野寺治孝
All images copyright © Harutaka Nodera. All Rights Reserved.