エッセイ エッセイのバックナンバー

 私は小学校の先生によく怒られました。「野寺君は絵は上手いけれど誰かのマネをしているようなそんな絵です。マネはいけません。下手でもいいから自分の絵を描きなさい」と言って例に見せてくれたのがゾウだかサイだかカバだかわからないクラスメートの絵でした。思いっきり笑ってしまい怒られました。ある年齢のあるレベルにおいてはマネはいけないかもしれませんが、こと写真に関しては「好きな作家を見つけたら思いっきり、徹底的に、どうどうとマネをしよう」と言いたいですね。裏を返せば完全なマネはできないでしょう。完全にマネができればあなたは超天才です。

 音楽を例にしましょう。エリック・クラプトンが好きでギターのフレーズをコピーしたとしましょう。音階は同じです。ドはドですし、レはレです。しかし、音質や微妙なニュアンス、ビブラートの掛け方やピッキングの力加減はコピーすることはかなり難しいでしょう。と言うよりもできないと断言していいですね。音はコピーできても誰もがクラプトンにはなれません。当たり前の話です。

 サザンの桑田さんなんかレイ・チャールズ風の曲を作って『ごめんねチャーリー』とタイトルまでつけてしまいました。ちなみにレイの『Unchain my heart』と聞き比べてください。笑えます。しかし、ちゃんと桑田さんの曲になっているあたりはさすがです。


 最初はパクリでもコピーでも何でもいいですから好きな作家を見つけたならばマネをしてみることです。かなり勉強になります。ちなみに私は写真家のジョール・メイロウィッツ氏が好きでアメリカのケープ・コッドまで会いに行きました。彼の『BAY/SKY』という作品に触発され『TOKYO BAY』を撮りました。厚かましく制作の途中で彼に見てもらいアドバイスまでしていただきました。『帰郷』は、もし彼が日本の富山県を撮ったならばどう撮るだろうと思いながら撮影しました。撮っているうちに自分のキャラクターが自然と出てくるようになります。難しいことは考えず、まずはマネから入りましょう。そして撮ったものをよく見て自分のオリジナリティを入れてみましょう。どんな偉大な作家でも過去の作品から100%影響を受けていないなんてことはありません。まずはマネから。そして自分らしさを磨きましょう。
写真家 野寺治孝
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