エッセイ エッセイのバックナンバー


 このエッセイが載るころには私の写真展「Many Classic Moments」が公開されています。今回展示しました写真のほとんどは昨年の6月にオアフ島とハワイ島で撮影したものです。すでにご覧になった方はお気づきかと思いますが、以前の写真よりもトーンが重く人によっては暗いと感じませんでしたか?そんなことを今回は書きたいと思います。

 遡れば2006年3月に松任谷由実さんとコンサートパンフレットの撮影のためハワイ島を訪れたときです。テーマは“切ない夏の1日”でした。ギラギラしたハワイではなくしっとりとした夏の終わりのような イメージでした。天気も悪く曇ったり時々雨が降ったりしたのが幸いしました。そのとき「暗いハワイも情緒があっていいね」とピンとくるものがありました。由実さんというスーパースターと一緒だったという高揚感もあったかもしれませんが何か新しいハワイが見えたのです。「次のハワイはこの路線を煮詰めたものにしよう」と思いましたがこの時点で6月にイギリスのランズエンドに行くことがすでに決まっていました。

 そのようなハワイへの思いを引きずりながらのランズエンドでしたが、かなりの割合で夏の終わりが撮れました。(ランズエンドは07年9月に写真展で公開済み。ギャラリーページ参照)そして満を持してのハワイ行きとなりました。

 まずはハワイ島のヒロに入りましたが思いが強かったせいかイメージ通りのものが撮れませんでした。こんなはずではないと少しあせってしまいましたが、3日目にコンパクトカメラを何の気なしに真四角のフォーマットに変えてみました。そのとたんアラ不思議と何かが見え始めたのです。新鮮にヒロの町が輝き始めました。そうすると相乗効果か、35ミリカメラのほうもガゼン見え始めたのです。それからはほぼ全体を通してイメージ通りの撮影ができました。

 タイトルは19歳のときに見たドキュメンタリー映画からつけました。後からつけたというよりも撮影する前から決まっていました。写真の全体を一言で言い当てている言葉だと思いました。私なりに訳すと「いくつかの古き良きひととき」、ハワイといえど日々新しくなっています。ですからせめて写真にだけでもオールドハワイの良さを残せればと思いました。あと年齢のせいかギラギラしたものよりも憂いのあるしっとりとしたものが好きになってきました。唐突ですが「今日は海がこんなにも明るくきれいだけれど、明日はわからない」そんな感じですかね。私のなかでは松任谷由実さん、ランズエンド、Many Classic Momentsは繋がっています。3部作と言っていいでしょう。たぶん次回作も含めると4部作になりそうですね。お楽しみに。

 

写真家 野寺治孝
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