エッセイ エッセイのバックナンバー

 自分の家の外で撮る写真はある意味すべて旅写真と言っていいでしょう。ごく近所だったとしても。ここではもう少し遠いところへ行く一般的な旅写真について書きます。旅に出ると心が浮き立ちいい意味でも悪い意味でも気持ちが高揚してしまいます。ましてや外国へ行った日には「せっかく高いお金を払って来たのだからすべて撮ってやろう」と思ってしまい結果的にはこんなところへ行って来ました的な面白みのない単なる観光写真になってしまいます。ではどうしたら面白い写真が撮れるか?それがわかったら私も名のある巨匠になっていたことでしょう。

 絶対的な答はわかりませんが、ひとつ言えることは「熱くなれ冷静に」ではないでしょうか。普段見てない未知なものに触れるのですから気持ちが高揚するのは当たり前です。しかし、熱い気持ちのまま撮ってしまうのは結局独りよがりの写真になってしまいます。そこで自分の後にもうひとり冷静な自分を置くようにするのです。ファインダーの四隅を良く見て、整理してからシャッターを切るのです。1枚目は熱い気持ちのまま自由に撮っても構いませんが2枚目は少し冷静に撮るといいでしょう。あとは「ここにいないあの人にこの風景を見せてあげたい」という気持ちで撮るといいものが撮れます。そのある人とは恋人でも子供でも理想の人でも構いません。その一人に向けて撮った写真は百万人の心を動かす可能性があります。初めから百万人を意識した写真はたぶん一人の気持ちをも動かすことはできないでしょう。

 例えばハワイに行ったとします。その「ハワイ“を”撮るのではなく、ハワイ“で”撮る」にするといいでしょう。要するにどこで何を撮ろうとたえず主は自分の感性にあるということです。今回のこのエッセイを書いていて私自身気がついたのですが、このことは旅写真に限らず写真全般にも当てはまりますね。最後になりますが旅に出たら風景だけでなく人や物にも目を向けてください。いい写真を撮ろうと思わず旅を楽しむことです。案外コンパクトカメラで何気なく撮ったもののほうが面白いかもしれません。
写真家 野寺治孝
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