エッセイ エッセイのバックナンバー

 ジャズを初めて聴いたのはいつ頃のことだったのでしょう。たぶん中学生のときテレビで見た「死刑台のエレベーター」という映画の音楽だったと記憶しています。マイルス・デイビスが吹いていたトランペットでした。ジャンヌ・モローがパリの街を彷徨うシーンに流れていました。モノクロのこの映画にはぴったりでとてもクールでカッコ良かったです。私はロック派だったのでその後しばらくジャズは聴きませんでしたが、二十歳の頃「ジャズとバーボンに女は弱い」という雑誌の見出しを見て女性にもてたい一心でジャズを聴き始めました。当時はいわゆるモロジャズよりも聴きやすいフュージョン全盛でリー・リトナーやラリー・カールトン、日本人では渡辺貞夫などをよく聴きました。

 私の家内もそうなのですが、「ジャズはみんな同じに聞こえる。だからどの曲を聴いていいかわからない」という意見をよく聞きます。それはもっともな意見かと思います。ジャズが他の音楽と大きく違うところはアドリブと呼ばれる自由にそのときのフィーリングで演奏してもよいというルールがあるところです。同じアーティストの同じ曲でも名作と駄作が存在するのです。「ジャズに名演あって名曲なし」と極端にいう評論家もいるほどです。これからジャズを聴いてみようと思ってる方はとりあえず次の5枚を聴いてみてください。もし1枚でも気に入ったものがなければたぶん何を聴いてもジャズを好きになることはないと思います。

クール・ストラッティング/ソニー・クラーク
カインド・オブ・ブルー/マイルス・デイビス
ワルツ・フォー・デビー/ビル・エバンス
シーン・チェンジス/バド・パウエル
ウェイブ/アントニオ・カルロス・ジョビン

 個人的にはピアノトリオが好きで、購入するCDの80%を占めています。特定の好きなピアニストはいませんがタイプとしては力強くて、繊細なエッセンスが感じられる人です。日本人では大西順子さんがいいですね。お薦めのアルバムを5枚写真入で紹介しておきますのでジャケット写真を見てください。

 写真をもし他のアートに例えるならば私はジャズだと思います。撮影現場で次々と考える間もなく撮ることはアドリブに似ていると思います。これは私の偏見かもしれませんが、いい写真家は絶対音楽好きであると確信しています。最後になりましたが「ジャズ好きの写真家ってカッコいいですよね。女性にもてるでしょう」と聞かれることがありますが、私に限って言えばそんなことはありません。そうなれるよう日々精進しています。

写真家 野寺治孝
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