エッセイ エッセイのバックナンバー

 良質の映画が大好きです。生涯忘れられない作品が何本かあり、これらとの出会いに感謝と幸福を感じています。写真、音楽、映画は私にとって必要不可欠なライフワークのひとつです。

 夏になると必ず見たくなる映画は洋画では『太陽がいっぱい』邦画では『ときめきに死す』ですね。どちらの作品も男性二人と女性一人が主人公の話です。主役はアラン・ドロンとジュリーこと沢田研二、当時を代表する二枚目スターです。脇を固める男優はモーリス・ロネと杉浦直樹、二人とも演技派の渋い役者さんです。ヒロインにはマリー・ラフォレと樋口可南子。この作品に共通しているテーマは青春の悲劇です。ここでは書きませんがラストのどんでん返しは壮絶です。音楽も甘美で素敵ですね。しかし、私が一番好きなところはどちらにも夏の切なさが写っているところです。画面は明るいのになぜか切ないのです。ストーリー以上にそのなんとも言えない空気感が漂っています。アラン・ドロンがイタリーの市場をぶらつくシーンと祭りの後、椅子に座ってマリー・ラフォレを待つシーンなんかまるで自分がそこの町に行ったような錯覚に陥ってしまうほどです。『ときめきに死す』は冒頭、杉浦がジュリーを駅で待つシーン急に夕立が来てその後の雨上がりの空気感が雨の匂いや淡い光の感じがたまりません。写真もそうですが、映画も見えているもの以上のものが写っていることが作品に深みを与え大切だと思います。

 映画は本当に心を豊かにしてくれます。私が学生だった頃はビデオもDVDもない時代でした。場末の安い映画館をハシゴしたり、古い映画はテレビの日曜洋画劇場などで見ました。見た映画を忘れないようにノートに感想やデータを書きとめ、自分で点数をつけ採点して楽しんでいました。

 映画館にはほとんど一人で行きました。『卒業』を見に行ったとき、前の席に私と同じ年頃のカップルが仲むつまじく見ていて、正直とてもうらやましく、またくやしくも思いました。(笑)「いつか可愛い彼女と卒業をみるぞ」と誓いましたがなぜか『エクソシスト』に行ってしまいあっさり振られてしまいました。とほほ・・・

 今は妻と月に1回くらい近所のシネコンに行きますがそれぞれ好みが違うので別の映画を見ることも珍しくありません。『卒業』のトラウマなのか未だにラブコメディーというジャンルは好きになれません。

写真家 野寺治孝
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