エッセイ エッセイのバックナンバー

 1975年、その日は秋にしては寒い日でした。私は風邪を引いてしまい鼻をたらしながら高校のクラスの友人と武道館の2階席に座っていました。そうこの日は私の人生に大きな影響を与えたエリック・クラプトンのコンサートの初日でした。この日までクラプトンはあまり聴いたことがなく、クリーム時代の「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」のギターリフを知っている程度でした。友人からの情報によればビートルズの「ホワイル・マイ・ジェントリー・ウィープス」のギターリストであるとゆうことぐらいしかしりませんでした。オープニングは「レイラ」だったのですが、なにせ曲を知らない私にとってどのようなものだったか覚えていません。ただ、淡々とギターを弾き歌うクラプトンはカッコよくあっという間の2時間でした。帰り道、友人に「同じような曲が多かったけど題名は何?」と尋ねると少し得意げに「曲名はわからないけどブルースというジャンルさ」。私にとってブルースといえば歌謡曲の「港町ブルース」か「伊勢崎町ブルース」しか知らなかったので同じブルースでもまったく違うなと思いました。とにかくそのブルースという曲が頭から離れなくなったのです。レイラよりもブルースでした。翌日、さっそくレコード屋さんにアルバム「いとしのレイラ」を買いに行きました。このアルバムはブルースがたくさん入っているクラプトンの代表作です。他にもう一人デュアン・オールマンというスライドギターの達人も参加しています。「誰も知らない」という曲のギターには完全にまいってしまいました。“ギターは泣く”ことをはじめて聴いてしまいました。この日を境にクラプトンは私の生涯のマイフェイバリットとなり、ブルース好きになってしまいました。今でも新譜がでるたびわくわくしながらCD屋さんに行きます。また来日のたびに3、4回足を運びコンサートを楽しんでいます。個人的には「レイラ」や「ワンダフル・トゥナイト」のようなヒット曲はもうやらなくてもOKです。それよりもクラプトン自身が好きな曲だけ演奏してください。これは夢ですが小さなライブハウスで聴いてみたいものです。究極の願いは我が家で私のギターとアンプで演ってもらいたいです。(笑)

 クラプトンに興味のある方は次のアルバムを聴かれると良いと思います。かなりの数がリリースされているので簡単な解説も書いておきますので参考にしてください。

「いとしのレイラ」‘70年
デレク&ドミノスというバンドに在籍時のアルバム。ブルースギターリストとしてのクラプトンが素晴らしい。若くしてそのプレーは完成されている。当時友人、ジョージ・ハリスンの妻と不倫の仲にあったせいか絞り出すようなボーカルもいい。はずれの曲なし。
 

「461オーシャン・ブルヴァード」‘74年
私の一番好きなアルバム。全編リラックスしたレイドバック・サウンドで溢れている。長いギターソロはないがストラトキャスターの枯れた音が心地よい。夏になると聴きたくなる。なぜかマイアミかハワイが似合いそう。
 

「フロム・クレイドル」‘94年
全曲ブルースのみのアルバム。かなり気合の入ったボーカルとギターソロが聴ける。ただし、1曲目だけは少し力を入れすぎていて浮いてしまっている。いつも2曲目から聴いている。
 

「ワン・モア・カー・ワン・モア・ライダー」‘04年
最新のライブ盤。新旧取り混ぜての選曲はおもしろい。バンドとしてよくまとまっている。2枚組みでコンサートを丸ごと収録している。アコースティック、ブルース、ヒット曲と何でもありなので入門用としては最適。
 

「アンプラグド」‘92年
グラミー賞にも輝いた名盤だ。世界中で売れに売れたがやはりいいものはいい。たぶん本人はこんなにヒットするとは思わなかっただろう。やはりブルースがいい。エレキでうまい人はアコースティックでもうまい。味わいあるボーカルも聴ける。
 

 以上5枚を聴いてクラプトンを好きになれない方は他の物を聴いてもだめだと思います。まだまだよいアルバムはありますがとりあえず5枚を選んでみました。今回はすっかりクラプトンの一ファンとして書いてみました。

写真家 野寺治孝
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