エッセイ エッセイのバックナンバー

 スティルライフ、いわゆる静物写真(花、食べ物も含みます)はとてもおもしろい分野だと思います。私の写真はボワーッとやわらかく、明るいテイストなので「絞りは開放ですか?」とよく聞かれます。ほとんどの写真は基本的には開放で撮ります。ただ、被写体が小さくマクロレンズでかなり寄ったときは被写体とバックの距離がありすぎたりするので、ある程度バックがわかるように撮るときは少し絞ります。絞り値はケースバイケースなので特には決めていませんが必ずプレビューボタンで確認します。ピントは基本的には手前に合わせます。写真のボケは後ろはきれいですが前ボケはあまりきれいではありません。AFは使わずマニュアルにします。主役となる被写体よりもバックに気を使います。いわゆる脇役がどれだけしっかりしているかということです。主役はもともと存在感がありますから汚れや傷などに注意をすれば良いでしょう。映画でもそうですが、脇役がしっかりしていれば主役は映えるものです。

 光はストロボなどの人工光はまず使いません。窓辺の日陰で逆光かサイド光をハンドメイドかヨドバシカメラの発泡ボードの銀レフ板で返してあげるだけです。このレフ板の光量が強かったり弱かったりとなかなか難しいのです。時には当てずに影を活かすこともあります。なんでもかんでも当てればいいというもではありません。

 大切にしていることは被写体とカメラの間にある空気感や間のようなものです。例えば、コーヒーカップを撮るとします。実際には自宅で撮っているのだけれど、頭の中では「パリのカフェなのか、ワイキキのレストランなのか、あるいは南青山の喫茶店なのか」そんなことをイメージしています。このときモノに頼って雰囲気を作りこむことはありません。あくまでもコーヒーカップ自身のイメージなのです。イメージに合った音楽を聴きながら撮影するといい結果が出ます。

 現地で撮るのが理想的です。パリをイメージしたならばパリのカフェ。ハワイならばワイキキの海辺のレストランで実際に撮るのが一番いいです。なぜならば自然だからです。旅にでると風景ばかりに目が行ってしまいますがこういったスティルライフもおもしろいですよ。例えば、ワイキキというテーマで5枚組み写真を作るとき1枚だけコーヒーカップの写真がビーチの次にあったらカッコいいと思いませんか。ですから私の場合、風景とかスティルライフとかジャンルを頭の中で分けていません。スティルライフも風景の一部ですし、その逆もありです。要は写真としておもしろければ何でもありですよね。いつでも何でも撮れるように体と頭を柔軟にしていたいものです。

※私のスティルライフ使用レンズ
50mm 真上から撮るときや少し引きぎみで雰囲気を活かすとき。
100mm 中間リングを使用します。開放で撮るとボケがとてもやわらかくなります。
100mmマクロ 小さな被写体や接写ものを撮るとき。
20mm 広角のゆがみを活かしてグッと寄るとパースが効いて面白いものが撮れます。
写真家 野寺治孝
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